モヤモヤ消しゴム
チームのみんなへ
今日は、意見の対立を解消する方法のうちの1つとして、私がある教育者の先輩から教わった「モヤモヤ消しゴム」を紹介します。
なお、大前提として、私は意見の対立というものを悪いものだとは思っていません。自己肯定感が低い人の場合には、意見と自分自身が同一化してしまっているので、自分とは違う意見に直面すると、あたかも自分自身が攻撃されたかのように感じて、意見の対立を避けたり、自分の意見を守ろうとする傾向にあります。
けれども、そもそも意見(文字や音)と自分自身は別のものですし、人によって目の前の出来事を解釈するときの前提が異なるので、意見の対立はあって当然です。そして、意見の対立が起こったときには、どちらか一方が正しくて、どちらか一方が間違っているという見方をするのではなく、お互いが見落としている点を確認するという姿勢がまずは基本だと思います。
また、私たちのチームで絶対にやってはいけないのは、そうした対立や摩擦を直視する勇気を手放して見て見ぬ振りをしたり、自分の中で我慢して抱え込むという行為です。誰かが我慢したり、モヤモヤした感情を表に出さないのは、ティール組織(進化型組織)の3つの特徴のうちの一つである全体性(wholeness)に反するからです。
さて、そんな意見が対立が生じたときに「どうコミュニケーションをとるのか?」という「型」があると、見落としに気付きやすくなります。
そのコミュニケーションの1つの型として今日紹介するのが、最初にお伝えした「モヤモヤ消しゴム」です。モヤモヤ消しゴムの使い方はとてもシンプルで、次の4つのことを「自分にとって」と「相手にとって」の2つの場合について考えます。
◆自分にとって、それを……
・やるメリット
・やるデメリット
・やらないメリット
・やらないデメリット
◆相手にとって、それを……
・やるメリット
・やるデメリット
・やらないメリット
・やらないデメリット
例えば、部屋に「ドレッサーを置きたい妻」と「ドレッサーを置きたくない夫」がいたとしましょう。(ちなみに、ノンフィクションです。)
妻「リビングの隣の部屋に、ドレッサーが欲しいんだよね。」
夫「でも、仕事のデスクもあるし、仕事してるときに横で化粧とかドライヤーをされると、気が散るなあ……」
妻「そんなに毎日、家で仕事する?」
夫「いや、まあ、毎日ってわけじゃないけど、邪魔が入る可能性が頭にあるだけで、集中できないんだよね。」
これだと平行線ですよね。お互いが「自分が正しいと思っている現実」をぶつけ合っているだけなので、行き着く先は、どちらか一方の妥協で、モヤモヤは残ったままです。
では、この状況に対して「モヤモヤ消しゴム」を使うとどうなるのかを見てみましょう。
◆自分(夫)にとって、ドレッサーを……
・置くメリット:妻がいつも綺麗でいてくれようとする
・置くデメリット:家での仕事に集中しにくくなる
・置かないメリット:仕事をするときに集中できる
・置かないデメリット:妻が我慢したまま生活することになる
◆相手(妻)にとって、ドレッサーを……
・置くメリット:家の中でのプライベート空間ができる
・置くデメリット:夫が仕事に集中できずピリピリする可能性がある
・置かないメリット:ドレッサー代が節約できる
・置かないデメリット:化粧やドライヤーを洗面所で立ったままやることになる
こうやって4つのことをそれぞれ書き出すと、自分が見落としていた点に気付けるんですよね。大抵の場合には「自分にとってのメリット・デメリット」しか見ていないことが明らかになります。
わかりますか? 意見の対立というのは、どちらかが間違っているから起こっているのではなく、お互いに見落としがあるから起こっているのです。
意見の対立を感じた場合には、妥協を目指すのではなく、見落としている点を探していきましょう。そのためのアイテムが「モヤモヤ消しゴム」です。なお、モヤモヤ消しゴムは、自分対相手だけでなく、自分の中での意見の対立についても使えます。コミュニケーションというものは、自分とするものでもあるので。
*追伸
ちなみに、さっきのノンフィクションの結末としては、自分自身の見落としに気付いた夫が「ドレッサーを置く」という選択をしたそうです。